第1回 初版

年を重ねるにつれて、肉体的・精神的な機能は低下してくるが、人はこれらの低下と折り合いをつけながら、日々の生活を送っている。骨折、脳卒中、認知症などにより、自分自身で身の回りのことができなくなると、(特別)養護老人施設へ入所される方も多いが、経歴、ものの見方、考え方などは十人十色である。

利用者にとって施設は終の「住処」であり、自宅にいるように穏やかで、ゆったりとした時間が流れていく。「もちつき」、「端午の節句」、「たなばた」、「秋祭り」など四季折々の催しものによって季節の移り変わりを感じて頂き、「音楽」、「カラオケ」、「絵手紙」、「押し花」、「将棋・囲碁」などの趣味の時間を用意し、皆さんに楽しんで頂いている。

TMGグループに属している施設であるということが関係しているのか否かは明らかではないが、最近「胃瘻」、「痰の吸引」、「糖尿病」、「腎臓病」、「高血圧」、「認知症」など、医療の介入を必要とされる入居者が増加傾向にある。とりわけ、認知症の方が多い。医療の限界を認識され、施設で「終末期」を迎えたいと、「看取り」を希望される方もいる。

本施設の基本は、利用者の尊厳、安全を担保しつつ、利用者の方のこれまでの生活スタイルを尊重した介護・看護にある。これらの多様な要望に応えるために、施設内外での研修、介護研究、さらに「多職種合同カンファレンス」を実施している。

「介護・看護の世界」は社会からの熱い思いや期待を感じて働くことができる分野であるが、肉体的にも精神的にも「厳しい世界(K)」であると言われてきた。本施設でも、腰痛などの肉体的なトラブルを抱えている職員、介護・看護技術、利用者、家族との対人関係に悩んでいる職員もいる。対策として、腰痛予防体操、メンタルケアなどを実施しているが、根本的な対策が求められている

将棋や囲碁の分野では、人工知能(AI)は人間を凌いでいる。医療の分野でも、先端的な手術にロボットが利用されており、近未来には病気の診断・予防にもAIが活躍すると予想されている。AIを利用した安全・安心で、利用者に優しい介護サービス法の開発は喫緊の課題であり、これらの先端技術の導入が待ち望まれている。

先端技術の導入に当たっては、専門的な知識のみならず、身の回りの人に対する深い理解と愛情、さらに地域社会との深い絆が必要であり、多様化する利用者のニーズに的確に応えるには、AIやロボットを使いこなす「知恵」が求められている。ロボット・AIの導入により、「マンパワー集約型」の介護の世界は大きな変貌を遂げ、職員はこれまで以上に生きがいと誇りをもって働くことができるようになるであろう。

情報システムが普及している今日、私たちは望む情報に容易にアクセスできるようになってきた。しかしながら、これらの情報には断片的なものが多く、偏った内容のものも散見される。医療・公衆衛生分野の発達によって、健康で長生きすることができるようになったが、その限界も指摘されている。このコラムでは、医療、介護、福祉に関わる基本的な課題や最近の話題などを取り上げ、皆さんと共に考えていきたい。

とだ優和の杜
統括事業責任者
水口 純一郎