第6回 音楽の力

音楽の力

明るい曲、楽しい曲、前向きになれる曲、哀愁を誘う曲などで体験されるように、音楽には人の気持ちを変える力がある。歌ったり、合奏したり、笑ったりすることによって、参加者の一体感が生まれ、子供の頃や青春時代に口ずさんだ懐かしい歌を聞くと、当時の状況がありありと浮かんでくる。 「アポロン」からのプレゼントである音楽には、人同士を結び付ける力、感動、幸せを運ぶ力がある。アポロンは、オリンポス12神の一員であり、芸術、医療、そして予言を司っている。

好きな曲を聴くと、脳が活性化され、セロトニン、ドパミン、βエンドルフィンなどの「幸せホルモン」が分泌されて、私たちは楽しく、前向きになる。免疫機能も高まると言われている。施設ではこの音楽の力に注目し、この音楽の力で周りの人を少しでも幸せにしたいという思いで、長年にわたって「音楽療法」を実践・研究されている「貫 行子先生」※に来て頂いている。

挨拶に始まり、歌いながら「じゃんけん」をしたり、昔の歌謡曲を歌ったり、心身を活性化する楽器演奏をして、最後に「さよなら」の曲、あっという間に1時間が経過する。非常に情熱的な先生で、困っている方の力になりたい、という思いがひしひしと伝わってくる。この実践の成果は「第15回世界音楽療法大会(つくば国際会議場)」で発表された。

音楽を聴く、歌を歌う、手足を動かす、脳トレーニングなどをすることにより、それぞれの活動に応じた脳の領域が活性化される。これらの活動をうまく組み合わせることによって、相乗的な効果が得られ、認知機能や身体機能の維持・向上につなげることができるのはないか、と期待している。

音楽ばかりではなく、絵画、ダンス、さらにお茶や珈琲などの嗜好品などでも同様の効果が得られる。好きなことをする、好きな人と一緒にいると、この世はバラ色に見えてくる。つまり、幸せ感が高まり、健康で長生きできると言われている。

施設では、音楽、ダンス、絵手紙、将棋などのボランティア活動、さらに四季折々のイベントなどを通して、人生を楽しんで頂き、健やかに、穏やかな生活を送って頂きたいと願っている。利用者、ボランティア、そして施設スタッフの思いが共振する中に、今日の幸せ、明日の希望が詰まっているのである。
(※日本音楽療法学会評議員、上野学園大学客員教授)

社会福祉法人 優美会
特別養護老人ホーム とだ優和の杜 理事
水口 純一郎